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第66話 ゾルダの異変 ~アグリサイド~

Author: 光命
last update Last Updated: 2025-05-13 21:18:53

「次は……

 ヘルハウンドの群れだそうだ。

 作物が食い荒らされるらしい」

ギルドからの情報に目を通し、ゾルダたちに伝える。

「っ……

 なんだ犬っころか。

 そう大したことないのぅ」

なんだか一瞬ゾルダが顔を歪めた気がしたけど……

もう一回確認すると、いつものゾルダの顔だった。

見間違いだろうか……

マリーもいつも通りベッタリで特に何かある感じはしていないようだ。

俺の勘違いならいいんだけどね。

その後、俺たちはヘルハウンドがいると思われる森へと足を運んだ。

ゾルダの魔力探知を頼りに群れの位置を把握する。

「群れが分散し始めたようじゃ。

 ワシらを囲って追い詰める気かのぅ」

「それなら、俺たちはどうする?

 俺たちも散らばって、それぞれ個別に戦っていくか?」

囲われて一度に相手するより、個々を倒す方がよっぽど安全だ。

そうゾルダに提案はしたものの……

「いや、ワザとワシらを囲わせる。

 一斉に襲い掛かってきたところで、ワシが一網打尽にしてくれるわ」

と言って一向に俺の話を聞かない。

輪をかけて

「素晴らしい作戦ですわ。

 さすがねえさま」

とマリーがゾルダを後押しするから余計にだ。

ただ俺はちょっと気になっていた。

さっきのローパーの時もそうだし、スパイダーの時もそうだ。

なんかゾルダの気持ちが上ずるというか力み過ぎというか……

いつも以上にパワーが出ている気がして、心配になる。

ザコと言う割には火力がデカいのである。

二日酔いの所為とかならいいんだけど……

「犬っころたちがだいぶ範囲を狭めてきたのぅ

 こちらを追い詰めておるつもりじゃろうが……」

ゾルダはニヤニヤしながら、ヘルハウンドの気配を追っている。

あの顔を見ていると、普段と変わらない。

俺の取り越し苦労で済むならいいんだけど……

そうこうするうちに、ヘルハウンドの群れが俺たちを周りにわんさかと集まり始めた。

八方塞がりの状態に取り囲んできた。

「ゾルダ、大丈夫か?

 逃げる隙間もないぐらい囲まれちゃったけど……」

「案ずるな。

 問題ないのぅ。

 犬っころたち、追い詰められていることも知らずにのこのこと出てきおった」

ゾルダはそう言うとより一層笑顔になっていく。

「さてと、そろそろ頃合いかのぅ。

 これで全部のようじゃな」

ヘルハウンドの群れがすべて現れたところで、ゾルダがしかけていく。

「|闇の雷《
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    余はゼド。この世界を恐怖に突き落とす魔王である。150年ほど前には勇者を相手に引き分けて少々深手を負ったが……傷が癒えた今、再びこの世界を恐怖のどん底に陥れてくれるわ。まずは手始めにアウレストリア王国を陥落させるべく、部下たちに命じた。報告を受けておるが、戦果は上々のようである。このまま一気に攻め落とし、世界征服の足掛かりとするのだ。「ゼド様、緊急の報告がございます」近衛兵の一人が慌てて駆け寄ってくる。「なんだ。さっさと申せ」「はっ、南方面の攻略をしていた四天王の一人クロウ様が倒されたとのことです」「何?」余の側近のであるクロウがやられただと。ふん、四天王の中では一番弱かったしな。だから一番楽そうな南を任せたのだが、結果も出せないとは。「報告ご苦労。 さがっていいぞ」これは南方面の戦略を立て直ししないとな。ここは東方面を任せているメフィストに任せるか。それとも……しかし、こうもっと強い奴はいないものか。どいつもこいつも弱くて役立たずばかりで困る。もっと余を満足させてくれる奴はいないのか。どう持ち駒で国を滅ぼそうと思案しているが、手元の駒が少なくて困る。そんなことを考えていた時に、あいつが余のところに来た。「これはご機嫌麗しゅうございます、ゼド様」「おい、アスビモ。 余のどこが機嫌麗しいのか。 どいつもこいつも使える奴が少なくてかなわん」「これはこれは申し訳ございません。 私としたことが…… ゼド様の表情はいつも変わらずクールでいらっしゃるからつい……」アスビモは喰えん奴だ。だが余のために提案をしてくれる数少ない使える奴でもある。「世辞はいい。 今日は何の用だ」「はっ。 先日懐かしい方々にお会いしまして。 その報告にと参りました」懐かしい?どんな奴と会ったというのだ。「それがどうしたのだ。 余が懐かしむ奴などいない」「ゼド様、そう言わずにお聞きいただければと。 本当に懐かしい方々でしたので」アスビモはもったいぶる言い方をしてくるな。「だからどうしたいうのだ。 余は機嫌が悪いのだ。 これ以上、余に絡むのであれば……」「大変申し訳ございません。 すぐに終わりますので、ご猶予を」「で、誰なんじゃ。 その懐かしいというのは」「はい、ソフィア様とマリー様です」「なーにー

  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第62話 久々の休息 ~アグリサイド~

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  • モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている   第61話 お忍び小冒険譚 ~アウラサイド~

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